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設立のことば 沖縄手ぬ花 食と工芸 真南風

食べごしらえ 真南風の仕事

十年来、私たちは沖縄、石垣島・白保の天然もずくを取り扱ってまいりました。

もずくという食べ物を通して幾多の島の人とものとの出会い、巡り合せがありました。私たちの新しい仕事をこの上におかせていただこうと思います。

島の海幸・山幸たちは、それを育んだ海人や農民と同様、独特の風貌を備えております。一つ一つのものそのものに南の物語があり、しかも物語の彫りはまことに味わい深いものがございます。

かつて、絶対孤立をやむなくされていた島々で、いのちそのものであった食べ物。その食べ物を得る工夫・知恵・労働に全身全霊を打ち込むことによって、おのずと野の気品を備えられた人々の暮らしの厚み、その豊穣。

同じように、日本列島の山地・海辺の人々も地形・風土に調和した暮らしぶりをもっておりました。強権をもって追われ、潰えたといえ、千年の列島生命譜の末裔こそ、私たちにほかならず、沖縄の島々と向き合おうとすれば、遠い視線をもって今更にここを誇りと致さねばなりません。

真南風の仕事

沖縄が日本・本土・ヤマト、さまざまに呼ばれる国に復帰してから23年が経過しました。
復帰は沖縄に何をもたらしたでしょう。

一言でいうなら、取り返しのつかない島生命体への損傷の深さです。
一気に持ち込まれたハードな公共土木事業、巨額の補助金は、破壊と混乱をもたらしたばかりでなく、植民地的な社会基盤の脆弱さを固定しております。

海を埋め立て潰し、島を覆っていた深い緑が削ぎ取られ、20年このかた、常に何らかの公共土木工事が行われております。島嶼生態系としての島々に対する一切の配慮なしに行われた工法によって、赤土(表土)流出と海の汚染が先ず沿岸漁業に壊滅的打撃を与え、繰り返される赤土(表土)流出は農業と漁業の両面にわたる深刻な被害を生じさせております。

また、基幹産業と位置づけられた砂糖キビ生産も、後継者不足から収穫放置が相ついでいる中、94年、沖縄県経済連製糖工場の閉鎖案が浮上、沖縄県中部13市町村の生産農家1000人が「農家潰しだ」「工場の稼動存続を」と訴えて集会を持つに至っております。

当初の意図がどうであれ、公共事業としての圃場整理は、祖先の祈りと労働の蓄積である"地力"を根こそぎ消滅させる結果となっております。 この"地力"こそ沖縄現代史が被ってきた悲劇・受難・圧制を越えて島の人々が生きついでこられた力の源泉にほかなりません。

天与の自然に恵まれて、ものとひとが織りあげる一枚の布としての「もうひとつの自然。」神々と人の交響、相互の働きかけの中に"地力"が産まれてきたのです。

砂糖キビやパイナップルの危機も、つくられ管理された危機であって、島本来の危機では決してありません。活路は必ずあるはずです。

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