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設立のことば 沖縄手ぬ花 食と工芸 真南風

命産ましめる真南風

真南風(まはえ)、という言葉からは、古琉球の島々のたたずまいが匂い立ってまいります。

遥か南の海の彼方、小さなくり船を操り群星(むりぶし)に誘なわれて漕ぎ渡ってきた古代人(びと)が、島々に五穀と真南風を運び上げてきました。

海の深み、波から生まれ、力漲り、清冽に輝いて島に吹き渡ってきた真南風。
島にいのち孕ませる真南風。

1971年5月、沖縄の「日本復帰」より23年目の秋、私たちは縁あってここに「沖縄手ぬ花 食と工芸・真南風」を設立いたします。 発起人の女性たちは、いのちを孕み、生み育て16人の子の母として、断崖の危機にある水の惑星を癒し、今一度産ましめたい、という祈りをもって結ばれております。

地上に止むことのない戦火、一切の生類の未来をかき消す核の存在、とりわけ子供たちのただいまの惨禍。それら苦悩の報告を前にして、そこから絶望でなく、希望や勇気をくみ出すことは容易ではありません。

命産ましめる真南風

「私たちは多くの愛する人や友だちをもっている。けれども、その人々はまだ生まれていない」(『世界は恋人 世界はわたし』ジョアンナ・メイシー)

生まれていない人々から力を授けられること、時代を切り開く勇気の根拠のひとつをここに求めたいと思います。

そうして、今を生きるこの場から次の世代に架ける魂の母語を紡ぎたいと願うものです。魂の母語を求め得ようとする私たちの精神風土の基底には、何よりも海と島とサンゴ虫の営みに対する深い畏敬がおかれております。

この日本列島がかつてサンゴ礁によって形成されていたことを知ったときのあの心安らぐ思い…。

この時代にこそ、原初の空間、原初の森に還らねばならぬとの啓示を、ひたすらに聴き入る時に至っているのだと思われてなりません。

私たちは大地と森と海の子であり、それ以外ではありません。たかだか40〜50年の近代文明によって数千年来の私たちの種に伝承されてきた風土の象(かたち)が破壊されることなど有り得ぬものと、大本(おおもと)のところで信念をもたねばなりません。そうして、新しい風土形成のために小さな石を積む穏やかな力に恵まれることを謹んで願うものです。

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