炎天下での過酷な作業に加え、加工用から生果への切り替えの技術的なハードルの高さ、収穫のピークが読めない難しさなど、二人の前には数々の苦難が待ち受けていました。現在、国内に出回っている生果パイナップルの国産シェアは3.6%。うち八重山産はわずか1.2%※に過ぎず、小売の店頭ではほとんど見かけることのない、貴重な果実です。
※2008年9月1日公表 農林水産省「農林水産統計」より
高いハードルを越えて頑張る作り手の元で育てられるパイナップルたち。植え付けから収穫までには2年もの月日を要します。しかも、一つの株から収穫できるのはたった一玉。除草剤の使用を減らしているため、草刈りが度々必要です。そして二人が特にこだわるのが、肥料を切るタイミング。収穫の1年前から肥料を全くやらずに、パイナップルそのものが持つ自然の味を極限まで引き出しています。
南国の太陽をじっくり蓄え、ギリギリまで熟度を上げたその後は待望の収穫。灼熱の太陽の下、待ったなしの拾い取り作業を経て、翌日には小さな飛行機に乗り、延べ1500キロ以上の旅をして本土へ届けられます。
大きな台風に襲われ、苗が吹き飛ぶこともしばしばのパイナップル作り。けれど「風速20m※なんて、そよ風さ」と笑い飛ばすたくましさが生果パイナップルをここまで育てて来ました。
夜になるとそんなしっかり者の風情は引っ込み、「農業には陽気さが必要さ」と泡盛片手にガハハと笑い合う、永遠のガキ大将コンビの素顔がチラリ。苦楽を共にしてきた二人の熱い絆が八重山パイナップルを支えています。
※風速20m…風に向かって立っていられない程の強風